COLUMN 2019.07.16 UP

スーパーのレジの人

LENS ASSOCIATES inc.
前田 真弓

先日、私がよく行くスーパーマーケットで商品の配置が変わっていた。同時に人の配置転換もあったようで、私がよく並ぶレジ係の店員さんがそこにいなくなっていた。
その人はとてもはつらつとして感じがいい30代前半くらいの男性(Kさん)で、8レーンくらいあるレジの列でも、その人を選んでお会計してもらうくらいだったので、いなくなったのは残念だった。
数日たってお店に行くと、Kさんが食品を並べる中の人になっていた。桃を並べるその仕事は、レジ係の時と変わらず丁寧な仕事だったが、マスクをしながら黙々と手を動かしているKさんは私が知っている彼らしさがなかった。

「担当、変わったんですか?」初めて話しかけた。「そうなんです」と短い返事。「レジの時がとても楽しそうだったので」と伝えたら、「ありがとうございます。失礼します」と奥に行ってしまった。もうタイミングが合わなければ会うこともないかもしれない。マスクをしていたら、顔もあまり分からない。
そこから数日すると、今度はスイカを並べている姿を見かけた。もう話しかけることはなかったけれど。
あの人はもうレジには戻ってこないのだろうか。接客より黙々とした仕事のほうが好きだったのかな。もしそのスーパーマーケットでは出世街道がレジから中の人になることだとして、それがKさんが望んでいたら今回の配置転換は喜ばしいと思う。一方、彼はそれを望んでいたのだろうか。たくさんいるお客のうちの一人が帰り道、そんなことを思っているなんて、Kさんは思いもしないだろう。Kさんはたくさんのお客さんに好かれていたと思う。バーコードを読む仕事が早くて、感じがいい。そして先回りした、一言添えた丁寧な接客。30代男性がスーパーのレジ係なんて・・・という人もいるだろう。でも「その人」の仕事が、相手を助け、喜ばせることができることは、とてもいい仕事をしているのだと思う。Kさんはただ言われた仕事をこなすのではなく、自分で考えて仕事をしていた。

「レジに戻っていないかな」

そう思いながら、今日も私はKさんのいないレジに並ぶ。

PROFILE

STLONGpress編集長。旅行会社で海外ツアー企画職についた後、結婚情報誌の編集、宿泊予約サイトのマーケティングアドバイザー、人材企業にてキャリアアドバイザーを経て現職。趣味は国内旅行。プライベートでは小学生の双子の母。