INTERVIEW 2024.07.18 UP
2022年春、愛知県刈谷市にオープンしたNOBI COFFEE ROASTERS。古い理容室をリノベーションしたこの場所では、自家焙煎のスペシャリティコーヒー豆を販売しているほか、店内のカフェスペースでは定期的に地域の人やショップとのコラボイベントを開催しています。
「空き物件を買い取った当時は、ここでコーヒーショップをやろうと思っていたわけではなかったんです」と、店主の久米伸明さん。実はNOBI COFFEE ROASTERSがオープンしたのは、久米さんがこの建物を手に入れてから実に3年後のことでした。
ーーどのような経緯でこの店舗を購入されたんですか?
久米さん(以下 久米):もともとは、この建物が取り壊されるという話を聞いたことがきっかけです。刈谷市ってけっこう田舎なので、ご近所さんからいろんな情報がまわってくるんですよ(笑)。昔からこの場所を通るたびに「趣のあるいい理容室だな」と思っていたんですが、お店を営んでいたご夫婦が高齢になり娘さんの家の近くに移転すると耳にして…ここを取り壊してしまうのはもったいないから僕が買いますと手を挙げました。
ーーもともと物件を探していたわけではなく?
久米:いえぜんぜん(笑)。当時の僕はごく普通の会社員で、物件を手に入れたからと言ってすぐにお店を出す予定はありませんでした。でももともと古いものが好きだったし、この場所を見たときに、内装に少し手を加えるだけですごくかっこいい空間になりそうだなと感じたんです。なので、自分は会社員として働きつつこの場所をギャラリーやレンタルスペースとして貸し出すのもアリかな…なんてことを思っているうちに気づけば2年くらい経ってしまっていたんですが(笑)。
転機となったのはコロナ禍です。そのころ僕は商社に勤めていたものの、コロナの影響で海外とのやり取りが一切なくなってしまい、ただ納期を調整するだけの日々が続いていました。やりがいを感じていた仕事がほぼなくなり、将来の見通しがまったく立たないこともあって、自然と「だったらあの物件でお店をやろうかな」と思い始めて。ですので、コロナ禍がなく仕事がおもしろい状態が続いていたら、NOBI COFFEE ROASTERSは生まれていなかったかもしれません。
スペシャリティコーヒーを選んだのは、僕自身がコーヒーが好きだったというのもありますし、以前から「家の近くに感じのいいコーヒーのお店があるといいのに」と思っていたので、だったら自分でやってみようかなと。また、スペシャリティコーヒーになじみのない人も、道路に面した大きなガラス窓の前に焙煎機を置いたら興味を持ってくれるんじゃないかな、という期待もありました。
「スペシャリティコーヒーのお店を出そう」と決めたはいいものの、コーヒーの知識に関してはまったくの素人。プロからしっかり学びたいと、スペシャリティコーヒーを幅広く取り扱っているコーヒー店さんに「学ばせてほしい」とお願いしました。オーナーさんはふだん海外を飛び回っている人なんですが、そのころはコロナ禍でずっと名古屋にいたので直接学ぶことができたのはラッキーでしたね。
ーーオープン前から近所で話題になっていたとか。
久米:「どんなお店ができるんだろう」と楽しみにしてくれている人は多かったみたいです。「コーヒー屋さんができるらしい」と噂になっているよ、と教えてくれた友人たちもたくさんいて。でも大工さんいわく、「工事している最中に、店の前を通る人たちが『なにができるんですか』と聞いてくるからめんどくさかった」らしいです(笑)。
お店がオープンして約2年。通常のカフェ営業のほかさまざまなイベントも開催していますが、本当にいろんな人が来てくれて、予想していた以上につながりが増えているのが楽しいですね。うちで知り合ったお客さん同士がつながってビジネスが生まれたり、小さくスタートした試みが、周囲の人たちのアドバイスや工夫でどんどん進化していったり。
久米:「地元に貢献」のような文脈で質問されることもあるのですが、僕自身は「刈谷を盛り上げたい」という意気込みはまったくなくて、気の合う人が勝手に集まっておもしろいつながりができたらおもしろいな、と思っているだけ(笑)。自分自身が楽しめていて、周囲のひとたちも楽しんでくれる場所を提供できているのなら、とてもうれしいですね。
ーー今後の展望は。
久米:展望というか願望なんですけど、刈谷市にもっと素敵なお店が増えてほしいなと思っています。個人的には、タコス屋とかレコード屋とか、自分が行きたいお店ができてほしい(笑)。とはいえNOBI COFFEE ROASTERSも「自分がほしかったから始めた」みたいなところもあるので、誰もやらないならやろうかな…となっているかもしれないです。
誰かのために、というマインドももちろん大切なんですが、新しいことを始めるときは自分が楽しめていることが一番重要だと思っています。これからも自分自身が楽しめる場所、それによって誰かも楽しんでくれる場所をつくっていきたいですね。
NOBI COFFEE ROASTERSのロゴやパッケージデザインについて、LENS ASSOCIATESと久米さんが対談したカスタマーレビューもぜひご覧ください。
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